神様のボート

2003年3月30日
江國香織の小説を読んだ。母と娘のおはなし。
いろいろ自分の思いと重なる部分があって、泣けてしまった。

私がいろいろ考えた末に母を傷つけるような言葉を吐く時、
胸が押しつぶされるように苦しくなる。母がかわいそうで。
だけど母は、私がどれだけの覚悟でそれを言ったか知らないから
なんでそんなに冷たいのかと泣いて責める。
私は罪悪感でいっぱいになる。覚悟なんてふっとんでいく。
そんな悲しみは人に相談するものじゃないから、
ずっと自分一人のものだった。
この小説の中の少女も一人で同じ胸苦しさを抱えていた。

「昔好きだったものをずっと好きでいつづける必要はないと思う」
小説の中の中学生の少女がこう言っていた。
私は読んだ瞬間に、ずっとこの言葉がほしかったんだと思った。
昔だいすきだったもの。深く愛してたもの。
それが時間がたつにつれて遠い存在になっていってしまう。
それは相手のせいじゃなくて、変わってしまった自分のせいだ。
どうしようもなく、かなしかった。自分が嫌だった。

傷つけられる度に、傷つかない自分になりたいと思った。
虚勢を保てるようになった。皮肉も言えるようになった。
すこし大人になって、小賢しく強くなった。
でも昔のまっさらだった自分にはもう戻れないのだ。
まっさらだった自分が愛したものは、今の私には退屈すぎる。
それを言い出すタイミングがつかめなくて、悶々とした。
いっそ口に出さなけりゃいいやと思った。

自分が溜めこんできた思いを、少女が開放していく。
涙が自然と流れた。許される気がした。
江國香織の軽やかなのに深い文章が好きだ。
素敵なおはなしだった。「神様のボート」。

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